【読書】山彦とKDP

近所に本屋というものはなく、車を30分走らせてもレンタルビデオとCDとゲームと雑貨を狭い敷地に詰め込んだ書店といえるのか疑問なところしかない。1時間ほど走ればそれなりの品揃えの書店があったが、その店も昨年縮小移転してしまった。 山の中だから、ということではなく地方はどこも同じようなものなのかもしれない。 それもこれも全てインターネット販売のせい。具体的に言えばamazonのせい。 と言いながらも、amazonのヘビーユーザー。プライム会員で、kindleユーザーで、echoユーザーで、unlimited読み放題プラン契約。 書店に行くのに片道1時間、約40km、1L/145円でリッター12kmと考えれば往復の交通費だけで約1000円。しかも風呂に入りながら読むとしわしわになってしまう紙の本しかない。 新Kindle Paperwhiteは防水だし、旧Paperwhiteもジップロックに入れれば劣化もなく読める(自己責任で)。
こんな根っからのamazonユーザーだけれどUnlimited読み放題は頂けないと思っている。 雑誌等を見る目的なら良いのかもしれないが、PaperwhiteはモノクロのE-inkだし、文芸の品揃えははっきり言って悪い。 古典系はある。が、現代作家は本当に少ない。まぁ新刊を安く買われたら出版社も成り立たないのかもしれないが。
なのでUnlimited対象はほとんど読んでおらず、ハリーポッターくらいだったのだが、先月タイトルが気になってダウンロードした山彦が思いのほか良かった。 あとがきで述べられる著者の策略?に見事にはまってしまったようなものだが。
話は新潟を舞台にした、山を放浪する山の民ヤツカハギをテーマとしたミステリー&ファンタジー。 新潟文楽書房(ヤマダマコト)がKDPにてセルフパブリッシングしている作品。 弥彦神社や間瀬、スノーピークの下田と訪れたことのある地域が出てくるため雰囲気を思い浮かべられることもあるが、よく練られたプロットに複数視点でのリズム感の良さ、取材によるリアリティなど本当に大手出版社系でデビューしていないの?というものだった。 まぁ多少強引な(著者曰くアクロバティックな)展開もあり、著者のメッセージが表に出てきすぎている面もあるが、音楽も然り、それがインディーズの良さでもある。 新潟に住んだこともないし親族がいるわけでもないけれど、スノーピークの本社や弥彦山など行って損のない場所があるので、読んでからでも読む前でも一度訪れると更に楽しめる作品だと思う。
そろそろ冬も終わり雪もとけてきたが、たまに新雪に人の足跡が残っていることがある。 一人分のこともあれば複数のこともあり、恐らく冬山トレッキングかとは思うが、もしかしたら山の民のものなのかもしれない。 と、変わらぬ山の中の日常に違った視線を与えてくれるので、読書はやめられない。

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