マツダ3の発売日となった5月24日にアクセラの整備予約を入れていたので、というよりも、後から思えば新車営業のためにその日に予約を取られた感が強いのだが、整備待ちの間に試乗してきたのでインプレ。
尚、試乗したのはハッチバック(ファストバック)15S/FFとセダンのXD L/AWD。
目次
外観
プレスラインが無くなったので人によっては物足りなさがあるかもしれないが、オラついたフロントやラインを複雑に組み合わせたゴテゴテした感じのデザインが好きではないのでシンプルでまとまりがあり造形に優れていて美しいと思う。それによって犠牲にしている部分(室内空間とか)はあるけれども。
サイドステップ部分に水平の返し?的なものが付いており、ここに汚れが溜まりそう、と若干気になった。
内装
こちらもシンプルで出来が良い。エアコン周りの個々のエレメントが小さくなりすっきりした。また、恐らく人間の身体の動きに合わせて自然な動作となるようボタン類が配置されており、小さくともこれまでより操作はし易い。
メーターパネルも三眼になり質感アップ。腰痛持ちなのでよくアームレストに肘を置くのだが、アームレストの材質も見直されたのか硬さもかなり気持ち良いものになっているような…。インパネ周りはこのクラスの車でかなり良いのでは。
ただ、マツダ車の伝統の欠点というのか後席は相変わらず狭い。非常時以外は「後ろにどうぞ」とは言いづらい。またリアウインドウ辺りからのの視認性は更に悪化した気がする。荷室も若干狭くなったかな。
シート
先に述べたように腰痛持ちなので、特に冬季は現車のアクセラには30分も乗ってられない状態のこともあるが大分軽減されている。身長(180cm半ば)のせいもあるとは思うが、アクセラのシートはどうしても背中が丸まった形になってしまうので、別途ランバーサポートを入れて何とか背中を立たせる形にしているのだが、標準シートでこれが実現されている形。高級車のようなシートではないが背中をしっかりサポートしてくれる。社長の威厳ある椅子というよりは、現場の負荷を減らす椅子という感じ。
テレスコピックもアクセラよりも手前に調整できて、体型選ばず無理なく使えそう。
ヘタリがどれだけあるか分からないけれど、個人的にはファブリックシートの方が良かった。レザーシートは暑くて若干柔らかい。
マツダコネクト
今はもう無いものとして思考に含めないことを選択するに至る程の位置にいるマツダコネクト。横長の8.8インチディスプレイになり起動速度もコンテンツ間の移動速度もかなり上がった。営業マンが言うには起動速度はこれまでの約半分とのこと。半分でも遅いくらい…とは思うものの、現状に飼い慣らされている身としてはかなり感動する速さだった、苦笑
ナビも自車がカクカク動くタイプではなくシームレスにヌルヌル動く。交差点では案内看板も表示され分かりやすい。
コマンダーコントロールは四方向入力ではなく自由に移動出来て、コマンダー上部はタッチパッドとして使えて便利。
ナビは暫く使ってみないと分からないものの、試乗中は自車位置がズレることもなくヌルヌル動き、市販のエントリーレベル〜ミドルレベル程度にはなっていそう。
それとバックカメラに感動!画質がかなり良い。これまでが悪すぎたのだが。HDMI入力端子がアームレストの所に付いていたからマツコネの画面の解像度の問題もあるだろうが。ステアリング連動付き。
コネクテッドサービスは8月開始とのこと。3年間無料でその後は有料。ただ、他社(主にレクサス)よりは値段は安く設定したいとは言っていた。
走行性能
トーションビームサスペンション
マツダ3からリアが車軸式のトーションビームに変更になった。これまでアクセラはマルチリンクを採用していたので、まぁコストダウンと捉えるのが一般的か。
動きとしてはやはり凸凹道ではトーションビームっぽい突き上げ感はある。が、車に合わせてセッティングしているようで、揺れをしっかり吸収していて、所謂、跳ねる感じは少ない。
ただ、メーカーとしてはトーションビームでもマルチリンクと遜色ない仕上がりと言うだろうけれど、ここはマルチリンクを維持して欲しかったというのが実際の感想。どう頑張って調整しても仕組み的にトーションビームとマルチリンクでは動きが異なるし、左右それぞれで路面に対応するマルチリンクの方が安定感もあり乗り心地は上だろう。山奥に住んでいることもあり荒れた路面を走ることも多く、またAWD必須なので接地性能の違いは結構気になる。
欧州車基準なのか性能優先なのか足がちょっと硬めなので、年次改良で調整される気はする。
またトーションビーム採用したのに荷室は狭くなっているようだし、表向きとしてはコストも下がってないように見えるのでトレードオフ出来る変更ではないかなぁ、と。
ただ、街乗りではあまり気になる場面も少ないし、硬めの足が好きな人には好まれそうなセッティングにはなっているとは思う。
エンジン
ガソリンエンジンの1500ccは何も変わらない。試乗が気温が高い日中だったのでエアコンをがんがん掛けていたのだが、信号からの発進ではかなり唸る。遅い。
2000ccはもうちょっと余裕があるのだろうか。発売はまだ先(8月?)のようで試乗車も無かった。
1800ccのディーゼルエンジンはCX-3のものと同じようだが、車内にディーゼル特有のエンジン音がほぼ聴こえてこないことにまず驚いた。ガソリンエンジンと比較すると、アクセルを踏んでから反応に若干ラグがあるものの、タイミングさえ掴めれば後はすーっと加速していくし、ストレスになるほどのこともない。逆に1.5Gの力の無さの方がストレスになるかも。
エンジン音自体はガソリンエンジンの方が静かだが回転数が上がる場面が何度もありその度に唸る音を聞くはめになるので、そういった場面の少ないディーゼルエンジンの方がトータルとして静かな気がする。
ロードノイズ
アクセラはナビの声が聞こえない時があるほど本当にロードノイズが酷いのだがかなり良くなった。前述のエンジン音の良し悪しを判断できるほどに抑えられている。素晴らしい。
ブレーキペダル
かなりリニアになった。アクセラは遊びが結構大きくてブレーキ掛かるまでにラグがあるのだけれど、踏み始めからブレーキが反応している。好き嫌いあると思うけれど個人的にはリニアな方が好み。
AWD専用装備
フロントワイパーデアイサーが付いたのが雪国住みとしては地味にありがたい。ワイパーが凍っていたり、降るゆきがまとわりついたりで使い物にならないこともしばしばあるので。
どのモデルを選ぶか
私は冬季の積雪路、凍結路を走るのでAWD必須。ということで20Gはそもそも選外。20GのAWDは出ないのか、と聞いてみたが、20G自体そもそも作る予定はなかったがユーザーの要望を受けて製造ラインを追加したものらしく、20G/AWDの要望は既に多いものの製造キャパとして暫くは難しそう、とのこと。
15Gはレスポンスは気持ち良いけれどアクセラでパワー不足を痛感しているので選択肢にはならない。場所柄、高速もそこそこ利用するが、合流や追い抜きは結構きつい。
ということで選ぶとしたら1.8D(XD)/AWDしか無い。アクセラ買うときにCX-3のディーゼルを乗ったけれどイマイチ感が大きかった記憶があるのだが、マツダ3のディーゼルは納得できるものに仕上がっていると思う。
次に、XDのどのグレードを選ぶか、ということになるが、レーンキープアシストとMRCCが全車標準なので渋滞の高速に乗ることは殆どないしCTSは不要な気がするので、XD PROACTIVEで十分かなぁと思う。
そういえば、15Sにはアダプティブ・LED・ヘッドライトはオプションでも付けられず、自動ハイビームだけみたい。アクセラでは15Sでも設定できたのに。この辺りの設定はなかなか酷いと思う。また、パドルシフトも15Sには付かないようなので気をつけた方が良いかも。
価格
冒頭で述べたように結局新車の営業で整備を入れられた感じなので、頼んでもいないのに見積書を出してくれた。
ここ数年マツダが力を入れた甲斐あってか現車の下取り価格も思ったほど下がらず、あれ?意外と出費少なくて済むかも…というレベルで、これなら気持ち良く乗れるXDにしても良いかな、とちょっと思ってしまう。
ただ、帰宅してから貰ったパンフレットやサイトを確認すると、アクセラから20〜30万くらい価格が上がったという印象。標準装備となった先進技術もあるが、先述のように組み合わせが限定された装備もあり、それらを鑑みると一番売れそうなパッケージではやはり値上がりしたなぁと。
買うのか。
買わない。というか買えない。
見た目というよりは、腰痛のないシート、ストレスが激減してそうなマツダコネクト、ロードノイズの少なさ、パワーと静音性を両立したディーゼルエンジン、とかなり惹かれてしまったのだが、諸元表を眺めていて、最低地上高:140mmの表記を見て諦めた。
家は山にあり駐車スペースが坂になっているためこれでは底を擦ってしまう。現車のアクセラ(カタログでの最低地上高155mm)でも指1本分の空きしかなく、アプローチアングルにはアクセラと殆ど変わりが無さそうだったので現実的に駐車できない。諦めざるおえない…ディーゼルエンジンに今更、というか、今だから感動したから、CX-5でも考えようかな…とも思うものの今のマツダコネクトが付いてくるとなるとお金払う気が失せるのだよなぁ。CX-5に新マツコネ搭載されるまで待つか、うーん。CX-3は小さくて使い勝手が悪すぎるし。
まとめ
家の環境では買えないことが分かって実はかなり落胆した。環境的にSUVなど車高の高い車が向いているのだろうが、元来スポーツクーペ好きだからなのか、視線の高さやロールの感じが苦手で、ギリギリ低いところでアクセラを選んだところもあった。
インプレッサも低くなってしまったし、燃費を考えるとこのあたりのクラスの車は低くする方向なのだろう。乗れる車がどんどん減っていく…。
チラシの裏
営業マンから色々と説明受けている際に気になったのは「レクサス」という単語。兎に角、他社との比較となると必ずレクサスが一番に出てくる。
まぁ近頃のマツダを見ていると高級ブランド化したい感じが隠す様子もなく伝わってくるけれど、レクサスはトヨタという安定した受け皿があって成り立つと思うのだよね。パイか大きいから新機能の開発も将来的な搭載まで含めて計算できるし。
マツダ規模だとただただ車体価格が上がっていくだけになりそう。しかもレクサス(audiとかメルセデスもだっけ?)目指すけれどレクサスよりは安価というポジションに入りたいような比較だったから、何というか中途半端になりそうな。そう、マツコネのようにね!苦笑
今はデザインや内燃機関で評価されていて、価格も他社とそこまで離れていないけれど、マツダ3の設定みると、同クラスでは高額な部類になってきた感じがあるし、下取り価格は良くはなったけれどメーカー指導で値引きもかなり制限されているようなので、マツダ車を検討する層は他社にどんどん流れて行きそう。見た目は良いけれど、車内は狭いのに高価となれば尚更。そもそも他社と比較する時点でレクサス等の高級ブランドとは購買層とは違うように思うし。このまま調子に乗ってプレミアム路線突き進んだらエコカー減税が終わって残クレの軋みが出てきそうな数年後は暗黒時代に再突入するかも。
まぁ失敗と成功を繰り返しているところがマツダを愛せる理由のひとつだから、まぁこの調子乗っている感じがマツダっぽさでもあるけれど笑