AFCアジアカップ2019 まとめ

前回大会はベスト8止まりだったので準優勝ならばそこまで悪くはない結果ではある。怪我で離脱や出場不可、そもそも招集できなかったということが続いた中で4年後のワールドカップを目指して若返りを図ったチームの滑り出しとしては上々ではないだろうか。でもまぁアジアでは常勝であって欲しい、というのも本音ではあるが…。
それでも得たものは大きいだろう。見つかった課題というべきか。準決勝のイラン戦のように序盤からプレッシングがはまれば日本は本当に強い。だが決勝のカタール戦やグループリーグのベトナム戦など5バック(カタールは3バックだがディフェンス時は5バックの形)で守られたときの攻め手がない。ボールを保持したい選手ばかりな割に引き出しが少なく簡単に対策をされてしまう。また特にディフェンスのピッチ内でのコーチングが甘い、等々。
外から見てれば色々と言えてしまう。それが出来れば苦労しないよ、という感じだが、まぁ視聴者という外野なので無責任にも今回は選手個別に評価してみたい。

勝手に選手批評

権田修一

とにかくバックパスで何度もピンチを招いたのはかなり頂けない。失点に直接繋がらなかったのは相手のスキルの問題で上位相手ならば取られていただろう。現代サッカーではキーパーからのビルドアップもひとつの戦術になるし、プレーエリアが広ければそれだけシステムはコンパクトになるので、ここを改善しない限りスタメン定着は厳しい。ミスが精神的に響いていたのかポジショニングも後ろ目で多少冷や冷やする。

吉田麻也

今大会は割と安定してプレー出来ていた印象だったが決勝は酷かった。ハンドとなってしまったプレーは運が悪かったと言えるが、他の2失点は、誰か一人の責任とは言えないものの、吉田の判断の遅さが大きな要因ではあった。またベテランなので中盤のマークのズレやチェックの甘さなどもっとコーチングをして欲しいところ。

冨安健洋

方々で言われているが今大会の一番大きな収穫ではないだろうか。初戦のボランチ起用ではあまりフィットしなかったものの、センターバックで起用されてからは安定したプレー。最終ラインでのボール捌きも悪くなく、対人にも強い。欲を言えばビルドアップのパスを供給できれば、というところだが、まだ二十歳。これからに大分期待してしまう。

酒井宏樹

足を痛めていたようだが、安定したプレーは流石。今の代表の中では縦に突破出来て、離れも早い貴重なタイプ。若い選手との連携が上がればまだまだ生きる。

長友佑都

大会後に本人も口にしていたように、これが最後の代表かもしれない、と思わせるような感じだった。プレー自体は悪くない。ディフェンダーなので失点数から考えればアジアの代表レベルのプレーはしていた。が、やはり全盛期の無尽蔵なスタミナでサイドを駆け上がるという姿は殆ど見られないし、落ちないスピードで相手を振り切るという場面もない。縦の突破があったからこそカットインという選択も生きていたがそれも使えない。自由にさせたら面倒な選手であることに変わりはないものの、恐ろしい選手ではなくなってしまった。本人も若干辛そうに見えるのは気のせいか。にしても代わりがいないのも現実。

柴崎岳

試合勘の無さからかグループリーグは低調だったが森保監督が我慢して起用し続けたおかげでトーナメントに入ってから右肩上がり。何本も縦に鋭いパスを出すようになった。準決勝、決勝は身体も動いていた。だがボランチとしてはやはりディフェンス能力に欠けるのは否めない。当たりが弱いし、危機察知能力が低い。リーグにこだわらずコンスタントに試合に出られるチームに移籍して欲しいところ。

遠藤航

柴崎のディフェンス能力の低さを補う形では重要なディフェンス能力を持っている。が、瞬間の判断が遅い。あのポジションでボールを出すには1つか2つタイミングが遅く、良い場所を見てはいるようだがオーバーモーションで相手に読まれてしまう。ボールを持つにも少し懐に入れすぎで取られ難くはあるがパスも出しにくい。色々と惜しい選手なので地道に改善していけば欠かせない選手になる可能性はある。

塩谷司

青山・遠藤のバックアッパー的な緊急での追加召集だったが、青山が負傷離脱、遠藤も負傷で決勝でスタメン。遠藤のようにあちこち動き回ってディフェンスするようなタイプではないので物足りないという論調もあるだろうが、危ない場所は把握しているしポジションには入っていると思う。サイドへのパスの散らしが少ないのは気にかかるが、縦に入れるパスはタイミング的にも強さ的にも割と良い。本職がボランチというよりはディフェンス含めある程度のレベルでどこでもプレー出来るユーティリティプレーヤーなのでスタメン定着は年齢的にも厳しそうだが、何かのときのために毎回代表には呼んで連携高めておいた方が良い選手ではあるかも。

原口元気

オフェンスからディフェンスまで本当に頭が下がるくらい献身的に動いてくれる。しかもオフェンス時は下手な取られ方もしないし、ディフェンス時は取れるまで追いかける。中島の代わりならファーストチョイスは似たタイプの乾では?と思った方もいるだろうが、チームを安定させるプレーが出来る計算が立つ原口起用だったのではないだろうか。

堂安律

グループリーグではそこそこ通用していたが、ボールを持ってカットインという選択が多いのため対策されたのか、トーナメントに入ってからはあまり輝けなかった。オフザボールの時の動きなどを見ているとアイディアはありそうなので、アジリティをアップさせればもっと思うようなプレーが出来るようになるのではないかな。まだ若いしこれから。

伊藤純也

交代での出場ばかりだったが速さはあるしボールの持ち方も悪くない。だが、前にスペースが無い場合の打開策を持ってないように感じる。これはまぁ彼一人の問題ではなく、チームとしてどうスペースを作り出すか、という方が大きいかもしれないが。

南野拓実

何か特別なことをするわけではないけれど相手より一瞬一瞬の判断が早いのだろう。観察眼も優れていて、この選手ならこのタイミング、この選手はこのタイミングと本能的にやっている感じ。だか、目の前の瞬間に力を使っているから、周りがあまり見えていないということも散見される。堂安との連携は悪くなさそうなので、他ともプレーを続けていくうちに自然と解消されそうではあるが。あと決定力は欲しい。

大迫勇也

大迫の出来不出来で結果が変わるような大きな存在になった。決勝は不出来という論調はあるが、相手のレベルもここまで高い上に、大迫にボールが入った途端に2人も3人もチェックに来るようでは流石に思うようなプレーは出来ないだろう。その中でも上手く外に逃げたり、周りを生かす動きをしていたりチームが勝つために献身的にプレーしていた。周りのフォローというかスキルアップが待たれる状況か。

北川航也

期待外れ、と言っても良いが、大迫という選手の存在が大きく可哀想でもある。あまり知らないのだが、どちらかと言えば2トップの一角で生きるタイプの選手だと思うのだが。面白いプレーは見せていたし、球離れも良いので上手くフィット出来る方法を見つけられれば。今の状況だと代表に残るのは難しいか。

武藤

出場している時のプレーは悪くなかったと思う。大迫ありきの戦術なので北川にしても武藤にしてもワントップだと自身の持ち味と異なることを求められて苦労しただろうけれど。武藤もツートップの一角という使い方の方が良さそうだから、武藤、北川のツートップも見て見たかった。ボール保持中は周りが見えない気があるものの、他の時は結構見えているし身体も強くスピードもある。代表定着にはもうひとつ何か突き抜けるものが欲しいところではあるかな。

森保一

流れが悪くてもハーフタイム明けから見違えるように改善してくるという安心感はある。が、先行逃げ切りタイプではあるので、決勝での試合の入り方が悪かった。
代表監督がどこまで何を考えているのか到底分かるものではないが、交代の使い方に不満は残る。特にカタール戦は伊東ではなく乾だったのではないだろうあ。相手は疲れて5バック張り付き状態で伊東が使えるスペースが少なくほぼギャンブル。それなら乾で打開した方が良い。それにどちらかと言えば、塩谷が残り柴崎が前に出て行けるようになってチャンスも増えていたのでボランチコンビはそのままで、堂安との交代が望ましかったような。試合進行中の流動的な場面での指示に不安を残す。ただ準決勝のイラン戦は今後の日本スタイルの希望を見るような良いゲームだった。

槙野智章

何であんなにテレビに抜かれるの?何かの策略?調子乗り世代だから試合中でも何かやってくれると思ってるのかな。プロで代表だし真剣だから何もしないでしょう。まぁ槙野のプレーが代表レベルかと言ったら分からないが、他にいないのだら踏ん張ってもらうしかない。

その他

松木安太郎

視聴者に誤認させる言動は謹んでもらいたい。まぁた松木さん言ってる、って感じで面白いけれど。あと謎の戦略推し。中山は解説者として割と冷静に場面場面でよく見て判断して発言しているけれど、すぐあとに打ち消してこうすべきって頑なに譲らない。分かってる人なら良いけどあまり知らない人だと伝わりやすい表現を使う松木さん寄りになるだろなぁ。子供のサッカーとか真似する親が出てくるとかなり厄介な気が毎回してる、苦笑

中田浩二

トーナメントからピッチ解説で登場したけれど、実況アナウンサーからの質問にまず、そぉうですね、と言うのはすぐにでもやめた方良い。その流れで始まるとコメント前半は実況アナの言ったことに同意してただ言い方変えた繰り返しにしかならいし、繰り返している間に時間稼いで話す内容考えているのだろうけれど、ほとんどの場合、ほんと些細なの情報の追加にしかなっておらず解説というものではない。ただ試合を見ているのだろうなぁという気がする。振られなくても頭の中で常に解説しているくらいでないと。これなら喋りもしっかりしていて熱量も伝わる寺川アナの方がマシになってしまう。

VAR

決勝での吉田のハンドの判定は、本当に運がなかった。押している場面で、しかも多少タイムラグもあってタイミングも悪かった。流れを切るな、という意見もあるだろうけれど、あれは仕方ない。どこにどう飛んだかは分からないが、ゴールに向かったシュートが手に当たってしまったのだから。
決定的なシーンでのみ発動するVARなので賛否両論はこれからも出るだろう。個人的には正しいレフェリングという意味では歓迎だ。だが、もう少し迅速にVARを使うのか否かを判断することはできないものだろうか。1プレーも2プレーも経ってからVARというのはかなり辛いかと。カウンター戦術の場合は特に。

終わりに

個人的に球離れが早い選手が好きなので批評も偏見は出てしまうと思う。ボールを持つにしても原口や乾のようにあまり捏ねない選手は好きだけど。
いずれにしても決勝を見る限り、準優勝が今の日本の実力であるのは間違いない。完敗だった。カタールは帰化選手が多いとのことだったが、強豪の自国では代表に入れるか不透明なレベルでの選択もあっただろうということは推測できる。その選手たちに個でも負けていたのだから、まだまだ世界には遠く及ばないのが現実だ。
だが、ワールドカップ後ガラッと変えたメンバーでそこまで苦しまずに決勝まで辿り着いたというのは日本の地力も上がっている証拠ではあると思う。しかも全員で最初から最後までプレッシングを続けてボールを奪い、ワンタッチ、ツータッチでテンポよくボールを早く動かしてゴールまで持っていくという、日本に合ったスタイルの確立の片鱗も見えたような気もした。
まぁでも今更ながら長谷部誠は必要な選手だなぁと思わずにはいられない。本田でも香川でも岡崎でもなく、やはり長谷部。試合全体を見る力、各選手のポジショニングから自分のポジションを調整する能力、卓越したカバー能力と前線への危険な顔出し。レッズではドリブラーだったのに今ドイツではセンターバック。南野や堂安などの若い選手のスタイルと比べると古いタイプの選手になってしまうのかもしれないが、そういう歴史によって新しいプレーヤーも生まれているからね。冨安育成のためだけにも戻ってくれないかな、苦笑

そういえば今回の公式ボールが日本のモルテン製だったな。なんか新鮮。

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